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そして妻は「ハッピーっ』」と言い遺して逝った

そして妻は「ハッピーっ』」と言い遺して逝った_e0003290_1844871.jpg9月号の社内報で紹介する本を読んだ。
タイトルは「そして妻は『ハッピーっ』と言い遺して逝った」、周郷顕夫氏の著書だ。

筆者の夫人が胆嚢がんと余命3カ月と宣告され、ようやく妻と向き合おうとする筆者の姿と、闘病記が綴られている。
読み始めてすぐに驚いたのは、筆者には息子と娘が1人ずついるのだが、息子は交通事故死をされていること。
あまりにもあっさりと語られているので、ご子息だけでなく、夫人にも不治の病という不幸がやってきた一家に、哀れみを感じずにはいられなかった。

筆者は若い時分に、家庭を全くといっていいほど顧みず、仕事に女性に翻弄されていた。そのころ、2人の子どもたちは夫人によって守られ、道を踏み外すことなく、一人前の大人になるべくしっかりと躾けられていた。
夫人は毎晩、家計簿をつける。
毎月、余ったお金はカード請求用に貯金をする。
夫が他の女性に走ったとき、何度も離婚を迫り、何度も彼女のことを罵倒しても、夫人はその答えには応じず、その場所にしっかりと立っていた。

夫と歩んだ40年、夫を待ち続けた長い年月、最後の最後に夫人はたくさんの幸せを感じる。
著者自身も自分にとって夫人がどんなにかけがえのない存在だったかを悟り、逝去後には女々しくも彼女の名を小声で呼んでしまうほどになっていた。

闘病記よりも、胸が熱くなる個所がいくつかある夫人の半生のくだりを、夢中になって読んでしまった。
あまりにも、明るく前向きで、強く、そして美しい姿が、同じ女性として考えさせられた。
月並みだけれど、私だったらどうだろう、と想像してみた。
こんなに成熟した女性にはなれない私には、教えられることだらけだった。

by leneko | 2005-08-12 18:04 | BOOK